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山下 裕太特定社労士・15年実務

病気・けがで休職中に退職を余儀なくされた方でも、傷病手当金は退職後も継続して受給できる場合があります。最長1年6か月(通算)支給される制度ですが、3つの条件をすべて満たす必要があります。本記事では、継続受給の条件・退職前の準備・支給額計算・失業給付との関係・落とし穴までを完全解説します。

傷病手当金とは

支給対象となる病気・けが

退職後も継続受給する3条件

以下のすべてを満たす必要があります。

条件1:退職日までに継続して1年以上の被保険者期間がある

条件2:退職日に傷病手当金を受給中、または受給できる状態である

条件3:退職後も労務不能状態が継続している

退職前にやっておくべき5つのこと

1. 連続3日以上の欠勤実績を作る

退職日前に「連続して3日休んだ後、4日目から休んでいる」状態を作っておく。これが「待期期間」を満たすための条件です。

2. 退職日に出勤しない

退職日に出勤すると「労務可能だった」とみなされ、退職後の継続受給ができなくなる。挨拶や荷物整理は退職日前に済ませる、または郵送でやり取りする。

3. 医師の診断書・労務不能証明を確保

退職前に診察を受け、労務不能の証明書類を揃えておく。退職後は会社経由の手続きができなくなるため、退職前の最終診察が重要。

4. 健康保険組合の連絡先を確認

退職後の傷病手当金請求書の提出先(協会けんぽ または 健保組合)を確認しておく。退職後も同じ組合に継続して請求する。

5. 受給期間延長を視野に入れる

傷病手当金が終了した後、失業給付に切り替えるための「受給期間延長申請」も検討。退職翌日から30日経過後、原則1か月以内に申請。

支給額シミュレーション

月給30万円・標準報酬月額30万円の場合:

支給額別の試算表

月給 標準報酬日額 傷病手当日額 1年6か月総額
20万円 6,667円 4,444円 約243万円
30万円 10,000円 6,667円 約364万円
40万円 13,333円 8,889円 約485万円
50万円以上 16,667円超 11,111円 約607万円

失業給付との関係(重要)

傷病手当金と失業給付は同時受給はできません。両者の性質が逆だからです。

ただし、退職後すぐに「失業給付の受給期間延長申請」(退職翌日から30日経過後、原則1か月以内)をしておけば、傷病手当金 → 治癒後に失業給付、というリレー受給が可能です。

請求の流れ

  1. 毎月、医師に「療養担当者の意見書」を記入してもらう(傷病手当金支給申請書の医師記入欄)
  2. 退職前は会社の「事業主証明欄」も記入してもらう(退職後は不要)
  3. 申請書を健保組合または協会けんぽに郵送
  4. 1〜2か月後に指定口座に振込

よくあるトラブル

Q1. 退職日に出勤してしまった

残念ながら、その日が「労務可能日」とみなされ継続受給はほぼ不可能。退職日変更を会社と交渉できる場合は試みる価値あり。

Q2. 医師が労務不能証明を渋る

セカンドオピニオンを取るか、別の医師に転院を検討。心療内科・精神科では特に重要なケース。

Q3. 同一傷病かどうかの判断

例:うつ病で1年6か月受給後、別のうつ病として再開できるか。原則「同一傷病」とみなされ受給期間に算入される。完治後の別傷病なら新たに1年6か月受給可能。

監修者からのアドバイス

退職前の傷病手当金受給で最も多いミスは「退職日に出勤してしまう」ことです。挨拶や荷物整理で出勤すると、その日が「労務可能日」とみなされ、退職後の継続受給資格を失います。退職日は完全に休むことが鉄則です。

また、退職後の傷病手当金請求は、月1回まとめて行うのが一般的です。請求書には「療養担当者の意見書」(医師記入欄)が必要で、毎月通院・診察を受けることが事実上の条件になります。月1回の通院を欠かさないようにしてください。

傷病手当金が支給されている間は健康保険料の支払いが発生します(任意継続なら月額3〜4万円程度)。受給額から保険料を差し引いた手取りで生活設計を立ててください。

退職時に傷病で休職中の方は、無料相談で個別に手続きをサポートします。