厚生年金には、配偶者や子を扶養している場合に支給される「加給年金」と、その後配偶者自身の年金に切り替わる「振替加算」があります。家族手当のような制度で、年間40万円前後が加算されることもあります。本記事では、加給年金・振替加算の仕組み・受給条件・繰下げとの関係・申請手続きまでを完全解説します。
加給年金とは
- 厚生年金の被保険者が65歳になったとき、年下の配偶者または18歳未満の子を扶養していると支給
- 「年金における家族手当」
- 加給年金額:年額約40万円(配偶者)+ 子1人あたり約23万円
- 2024年度の正確な金額:配偶者408,100円、子1人あたり234,800円(第3子以降は78,300円)
加給年金の受給条件
受給者本人の条件
- 厚生年金の被保険者期間が20年以上(または共済組合の加入期間との合計で20年以上)
- 65歳到達時に老齢厚生年金を受給
- 「特別加算額」あり:受給者の生年月日により異なる
対象家族の条件
- 配偶者:65歳未満で生計維持関係にある(年収850万円未満)
- 子:18歳到達後最初の3月31日まで、または障害状態の場合は20歳未満
- 事実婚の配偶者も対象
加給年金の特別加算額(受給者の生年月日別)
| 受給者の生年月日 | 配偶者加給年金額 |
|---|---|
| 1934年4月2日〜1940年4月1日 | 33,200円増 |
| 1940年4月2日〜1943年4月1日 | 66,400円増 |
| 1943年4月2日〜1944年4月1日 | 99,600円増 |
| 1944年4月2日〜1945年4月1日 | 132,800円増 |
| 1945年4月2日以降 | 165,800円増(最大) |
1945年4月2日以降生まれの方は、基本額228,700円 + 特別加算165,800円 = 合計約39万円が支給されます。
加給年金の支給期間
配偶者の場合、配偶者が65歳になるまで支給されます。
- 例:本人65歳・配偶者60歳 → 5年間支給(年40万 × 5年 = 200万円)
- 例:本人65歳・配偶者62歳 → 3年間支給(年40万 × 3年 = 120万円)
- 例:本人65歳・配偶者63歳 → 2年間支給(年40万 × 2年 = 80万円)
- 夫婦の年齢差が大きいほど受給期間が長くなる
振替加算とは
配偶者が65歳になると加給年金は打ち切られますが、代わりに配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」が上乗せされます。
- 加給年金 → 振替加算へ自動切替
- 振替加算は配偶者の生年月日により金額が異なる
- 配偶者が終身受給
振替加算の対象者
- 1926年4月2日〜1966年4月1日生まれの配偶者が対象
- 1966年4月2日以降生まれは対象外(自身で十分な国民年金に加入できる世代)
- 夫が厚生年金加入者で、妻が長期間専業主婦だったケースに多い
振替加算額(生年月日別)
| 配偶者の生年月日 | 振替加算額(年額) |
|---|---|
| 1926年4月2日〜1928年4月1日 | 約23万円(最高額) |
| 1944年4月2日〜1948年4月1日 | 約12万円 |
| 1955年4月2日〜1956年4月1日 | 約7万円 |
| 1960年4月2日〜1961年4月1日 | 約4万円 |
| 1965年4月2日〜1966年4月1日 | 約1.5万円 |
※ 若い世代ほど振替加算額は少ない
典型シミュレーション
ケース1:夫65歳・妻60歳(妻 1965年生まれ)
- 夫65歳から70歳まで(5年間):加給年金 年40万 × 5年 = 200万円
- 妻65歳から終身:振替加算 年1.5万 × 25年(90歳まで生存)= 37.5万円
- 合計上乗せ額:237.5万円
ケース2:夫65歳・妻55歳(妻 1970年生まれ)
- 夫65歳から75歳まで(10年間):加給年金 年40万 × 10年 = 400万円
- 妻65歳以降:振替加算なし(1966年4月2日以降生まれ)
- 合計上乗せ額:400万円
ケース3:夫65歳・子15歳(中学生)
- 夫65歳から子18歳まで(3年間):子の加給年金 年23万 × 3年 = 69万円
- 配偶者がいなければ子のみの加給
「繰下げ」との関係(重要)
本人が老齢厚生年金を繰下げ受給している間は、加給年金は支給されません。
- 例:65歳から70歳まで繰下げ → その5年間は加給年金もゼロ
- 配偶者が60歳→65歳に達した間に繰下げると、加給年金200万円を丸ごと失う
- 年下の配偶者がいる場合、繰下げは慎重判断が必要
繰下げと加給年金の戦略例
パターンA:配偶者が65歳になるまで繰下げない
- 本人65歳:通常受給開始(加給年金あり)
- 配偶者65歳:加給年金停止 → 振替加算開始
- 配偶者65歳以降に本人が繰下げを継続するか判断
パターンB:65歳から繰下げ(加給年金犠牲)
- 本人65歳:繰下げ開始(加給年金もゼロ)
- 70歳:繰下げ受給開始(+42%)
- 長期的には繰下げ増額分が大きいが、加給年金分の損失がある
請求手続き
- 老齢厚生年金の請求時に同時申請
- 配偶者の戸籍謄本・住民票・所得証明書類が必要
- 子がいる場合:子の在学証明書等
- 年金事務所で一括手続き
離婚・配偶者死亡時の取扱い
- 離婚時:加給年金停止(届出必要)
- 配偶者死亡時:加給年金停止、振替加算も停止
- 再婚で新しい配偶者の年齢で再計算
- 配偶者が事実婚から法律婚に変わっても継続
監修者からのアドバイス
加給年金は「年下の配偶者がいる男性」に最も恩恵が大きい制度です。配偶者が5歳以上年下なら、200万円以上の加算になることも。一方、繰下げ受給を選ぶと加給年金を失うため、配偶者の年齢差を必ず計算に入れて判断してください。
また、再婚で配偶者が変わった場合、新しい配偶者の年齢で加給年金が再計算されます。離婚・再婚があった方は、年金事務所で確認しておきましょう。事実婚の配偶者も対象になりますが、住民票上の同一世帯であることが要件です。
振替加算は若い世代ほど金額が少なくなりますが、それでも終身受給なので生涯で30〜100万円の加算になります。請求漏れを防ぐため、配偶者が65歳になる際には必ず日本年金機構から書類が届くか確認してください。
共働きで両者とも厚生年金20年以上加入の場合、加給年金は支給されません。「妻も自分の老齢厚生年金を受給するから、加給年金は不要」というロジックです。共働き夫婦は加給年金を当てにせず、別の老後資金戦略を考えましょう。
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